今から10数年前のアットスクール開業当時、小学一年生で入塾してくれた子どもは高校生になり、中学生だった生徒は、高校を卒業し、大学や企業で有意義な生活を送っています。
しかし、一方でコミュニケーションや人との関係づくりが苦手な子どもたちは高校に進学をしたけれど中退してしまったり就職に苦労している子どもたちもいます。
現在日本では、不登校の児童生徒数は年々増加しており「2015年度学校基本調査」によれば、不登校問題に悩む生徒は、小中学生は全国で約12万3千人にもおよんでいます。そして通常学級に在籍している約6.5%の生徒が何らかの発達課題を抱えていると言われ、その人数は70万人にもおよびます。
これらの児童生徒が学校生活や家庭生活中で自信を失い二次的に不登校に陥ってしまったり、高校には進学するが、中途退学するケースも増加傾向にあります。
また、内閣府の調査では、15~34歳の若年無業者は60万人,若年者のフリーターは182万人。ひきこもりは69.6万人と推定され、大きな社会問題となっています。
こうした状況の中、子どもたちが将来就労し、自立していくために必要な力は、単に高校進学や大学進学ではなく、ソーシャルスキル*注1や就労に必要なキャリアスキル*注2をいかにつけていけるかが重要になっています。
しかし、現在の学校教育だけでは、なかなか習得することが難しく、不登校であった場合は、更に学びや体験の機会も少ないまま成人になっていることも少なくありません。
私は、つねづね、発達障害について、支援しなくてはならないものというのではなく、そこに大きな可能性を感じています。
発達障害の人たちがいるからこそ人類は進化して行く、なんていうと大袈裟(おおげさ)かもしれないけれども、昔の偉人と呼ばれるような、たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチとか、エジソンとか、現代で言えばビル・ゲイツとか、そういう人たちがいたからこそ、人類は発展したのだと、私は思います。彼らは一歩先を行っているのです。彼らは、私たちが気がつかないことを教えてくれます。
アットスクールを運営する毎日の中にも、子どもたちによって、気づかされること、もたらされる発見が、日々、たくさんあります。
平成27年6月「十人十色の子どもたち~発達支援の現場から~」という本を出版させて頂きました。本書では、私がこれまで出会わせていただいた多くの子どもたちや親御さんとの関わりのなかで学ばさていただいたことをごく一部のケースにすぎませんが、発達障害児への支援や子育てのヒントとなるようであれば、これほど嬉しいことはありません。
また、本書には、いわゆる発達障害や学習障害と診断されない子どもたちにも登場してもらいました。大人の世界でも、じつにさまざまな人がいて、いろいろなことが起こります。そこでも、この本に書かれていることが、なにかの役に立てばと思います。
もしも、みなさんのまわりに、対人関係やコミュニケーションが苦手な人がいたら、「変わった奴だ」と思ったり、「融通が効かない人だ」などと決めつけたりせずに、話しかけてみてください。そして、その人が困っているようであれば悩みを聞いて力になってあげてほしいのです。
そうした関わりが、子どもたちや親御さんに自信を与えるだけでなく、自分自身にとっても、大切なものは何かということを気づかせてくれる、きっかけになるかもしれません。
十人十色(じゅうにんといろ)。一人ひとりはみな違います。子どもを中心に互いに理解し合い助け合う教育支援事業として全国各地に子どもたちの自立のために、学校と家庭との協働教育の中で、将来の自立や就労に必要な力を育む教室(リソース)を拡げていきましょう。
注1:ソーシャルスキル・・・社会の中で他人と交わり、共に生活していくために必要な能力や日常生活や社会生活の中で必要なルールやマナー